紹介する本
風力発電に関する知見を広げるため、京都大学特任教授安田陽氏の「世界の再生可能エネルギーと電力システム 風力発電編 第2版」を読破したため、概要及び所感についてまとめていきます。
Q&A形式で、論文等のデータをリファレンスしながら風力発電分野全般について広く明記されており、納得感を持ちながら読むことができました。
※工学的(技術的)な専門書ではないので、その点についてはご留意下さい。
本記事の流れ
- 世界の再生可能エネルギーと電力システム 風力発電編 第2版の概要紹介
- 所感
プロフィール
- 電力関係の仕事に従事
- 第2種電気主任技術者取得済み
「世界の再生可能エネルギーと電力システム風力発電編 第2版」概要
本概要
内容
本書の内容についてです。
参考
3.11以降、日本国内では再生可能エネルギーへの注目が高まり導入も進んでいます。しかしその歩みは遅く、本格導入が始まっている欧米や他の国々と比較すると日本は特殊な状況にあります。
本シリーズでは、再生可能エネルギーと電力システムの現状、将来予測、コスト&便益、社会受容性と電力情報などについて、図表を豊富に用いて網羅的に比較分析していきます。再生可能エネルギーと電力システムをめぐる世界と日本国内の状況の違い、それを生みだしている誤った認識とあるべき姿について、しっかりと科学的に論じていきます。
シリーズ第1巻の本書は、風力発電に関する日本ではあまり知られていない数々の情報を、データやグラフを多数用いて分かりやすく紹介しています。このような「ファクトチェック」を行うことにより、風力発電に関する誤解を一つひとつ解消することができ、風力発電の有用性や将来性が分かってきます。
本文は、各項目に設問を設けるQ&A形式になっています。基礎知識から専門的な最新情報まで幅広い内容を扱うととともに、クイズ形式で、わかりやすく楽しみながら読み進むことができます。これにより風力発電について、データとエビデンスに基づいたしっかりとした知識が身に付きます。
※本書は2017年3月に発行の初版の内容を、最新データに更新・改訂し、追加情報を加えたものとなります。
※Amazon購入ページより引用
風力発電を(エビデンス付きで)正しく理解することを目的として執筆された本です。
目次
記載内容としては、次のものが挙げられます。
参考
【目次】
本書の構成とコンセプト
第2版の出版にあたって
第1章 風力発電の技術動向
1-1 そもそも「風車」って何?
1-2 風車の大きさ比較
1-3 風力発電所とウィンドファーム
1-4 風力発電所の大きさ比較
1-5 風車のユニークな特徴 その1:タービンって何?
1-6 風車のユニークな特徴 その2:風車のブレードはなぜ細い?
1-7 風車の効率とエネルギー回収期間
1-8 風車の設備利用率と稼働率
第2章 風力発電データの国際比較
2-1 風力発電の設備容量世界ランキング
2-2 風力発電と原子力発電の比較 (1)
2-3 風力発電と原子力発電の比較 (2)
2-4 風力発電と太陽光発電の比較
2-5 風力発電の導入率世界ランキングと導入実績
2-6 世界の電源構成の変化
2-7 世界の風車密度
第3章 洋上風車と風力発電の将来
3-1 洋上風力発電の設備容量世界ランキング
3-2 洋上風力発電所の大きさ比較
3-3 洋上風力発電の歴史と発展
3-4 世界と日本の風資源
3-5 日本の風力発電のポテンシャル (1)
3-6 日本の風力発電のポテンシャル (2)
3-7 風車メーカーの世界ランキング
3-8 日本の風力発電市場シェア
3-9 世界各国の将来目標
おわりに
最後の質問
第2版での追加情報
参考資料
著者紹介
※Amazon購入ページより引用
風力発電全般について、データを基に議論されています。
本書の特徴
私が読み進めていく中で感じた本書の特徴について紹介していきます。
チェックリスト
- Q&A形式での進行
- データに基づく考察
- 2020年12月18日発売
- 詳細な内容については他シリーズ参照
- Q&A形式での進行
目次で紹介した内容について、全てQ&A形式で記載されているため、読者も読みやすい構成となっています。
また、各Q&Aが5~6ページ程度でまとまっているため、論点がずれずに最後まで読み進めることができました。
- データに基づく考察
本書内容欄でも紹介されていたように、エビデンスを明記した上での議論は大切にされている印象がありました。
実際、各Answerに必ずエビデンスとなる図や表を挿入しており、抽象的な議論は避けられています。
- 2020年12月18日発売
データの情報が2020年12月18日発売以前のものである点には留意が必要です。
例えば、本書内にも「世界最大規模の洋上風力発電所」については、第1版発売時と比較して第2版発売時は順位が大きく変動している(新しく大規模発電所が建設されている)という記載がありました。
読者として、気になる点についてはインターネット等で最新情報を収集することも大切になってくるかと思います。
- 詳細な内容については他シリーズ参照
本書は基本的に風力発電全般について述べられています。(具体的な内容については目次参照)
その一方で、実際に風力発電事業に従事する方や、学生など専門的な知識を求めている方には、少し内容的に物足りない可能性は否めないかと思います。
そのようなもう一歩踏み込んだ内容に興味関心がある方は、本書の他シリーズを読むことをお勧めします。
メモ
※ちなみに今回紹介している風力発電編及び上記4冊が1冊にまとめられている【全集】もあります。
「風力発電編」所感
本書を読み終えた所感を下記に示します。
所感
本書は繰り返しとなりますが、データに基づいて記述されているため、納得感を持って読み進めることができました。
特にネットニュースがメインの情報収集源となっている私には、何となくのイメージで片付けていた面も多く、改めてデータで見る重要性を感じることができました。
また、風力発電の現状について理解しているつもりでも、再エネ全体や太陽光に関する情報とごちゃ混ぜになっている点もあり、改めて頭の中を整理するきっかけとなりました。
ちなみに、私が印象に残っている内容は次の4つになります。
2-5 風力発電の導入率世界ランキングと導入実績
3-4 世界と日本の風資源
3-5 日本の風力発電のポテンシャル (1)
3-6 日本の風力発電のポテンシャル (2)
特に日本の将来的な可能性について言及されている、3-5及び3-6は非常にワクワク感を持って読むことができました。
また「賦存量」や「導入ポテンシャル」という言葉についても、定義を明記しており非常に理解しやすかった印象があります。
全体的にまとまりがあり読みやすい1冊なので、風力発電に興味がある(だけどあまり知識が無い)方や、いつも風力発電についてイメージで話を進めていた方は、一度手に取ってみることをお勧めします。
(週末を使えば十分に読み切れる内容となっています。)
まとめ
本書は、これから風力発電について学びたい方に加えて、これまで主観的なイメージで風力発電について考察してきた方にも有意義な情報を提供してくれる1冊です。
特にデータを用いた他国との比較を通して、国内風力発電の現状(設備容量、ポテンシャル、国内メーカ動向など)を客観的に知ることができた点は非常に良かったと感じました。
ここまで紹介した内容に興味がある方は、一度手に取ってみることをお勧めします。
なお本書はアマゾンkindle or 通常の本で購入可能ですが、内容的に難しい面もなく、ページの行き来等も特に必要ないので、kindle版でも問題なく読むことができるかと思います。
(私は【全集】版の分厚い本で購入してしまい、持ち運ぶことができずに不自由感を感じています苦笑)
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